【運送業】元ドライバーから300万円の残業代請求!「歩合給」の法的整理を行い、80万円で和解した事例
事案の概要
| エリア/業種 | 栃木市/一般貨物自動車運送業 |
| 従業員規模 | 30名(正社員ドライバーメイン) |
| 対象者 | 退職した元ドライバー(在職期間3年) |
| 相談のきっかけ | 弁護士名で「未払い残業代請求」の内容証明郵便が届いた |
| 期間 | 約3か月 |
相談時の状況(突然の通知と経営者の不安)
相談にいらっしゃったA運送の社長は、手元の内容証明郵便を手に、困惑されていました。 事の発端は、一ヶ月前に自己都合で退職した元ドライバーからの請求でした。円満退職だと思っていた相手から、突然「過去2年分の未払い残業代、計300万円」を支払うよう、代理人弁護士を通じて通知が届いたのです。
当時の課題とリスク
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不明確な賃金規定: 「歩合給(売上給)の中に残業代も含んでいる」という、運送業界によくある「どんぶり勘定」の運用でした。
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高額な請求リスク: もし300万円の請求がそのまま通れば、他のドライバーにも波及し、会社の存続に関わる数千万円規模の支払いになる恐れがありました。
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経営者の疲弊: 「裏切られた」という精神的ショックと、対応による業務圧迫で、社長は本業に手がつかない状態でした。
争点と当事務所の提案・アプローチ
ご相談を受け、当事務所では直ちに就業規則、賃金台帳、デジタコ(運行記録計)の精査を行いました。
争点:歩合給と残業代の区分け
相手方の主張は「支払われている給与は基本給と歩合給であり、残業代は一切支払われていない」というものでした。 一方、会社側は「歩合給の中に残業代を含んでいるつもり」でしたが、契約書にはその旨が明確に記載されておらず、法的には非常に不利な状況でした。
当事務所の戦略
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労働時間の再計算: 相手方が主張する労働時間を鵜呑みにせず、デジタコの記録と日報を照らし合わせました。その結果、「手待ち時間(休憩時間)」が労働時間としてカウントされている箇所を特定し、実際の労働時間は主張よりも短いことを立証しました。
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手当の性質の主張: 就業規則の不備はありましたが、過去の賞与や手当の支払い実績から、「実質的に一部は固定残業代としての性質を持っていた」という主張を組み立て、全額支払いではなく減額交渉を行う方針を固めました。
解決の結果
粘り強い交渉の結果、以下の条件で和解が成立しました。
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請求額 300万円 → 和解金 80万円(約73%の減額に成功)
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分割払いの合意により、キャッシュフローへの影響を最小化
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口外禁止条項を盛り込み、他社員への波及を防止
裁判まで長引かせることなく、支払額の大幅減額と、3ヶ月という早期でのスピード解決を実現しました。
その後の変化(After)
このトラブルを機に、A運送様は当事務所と顧問契約を締結。「なんとなく」だった賃金規定を改定し、「基本給」「歩合給」「固定残業代」を明確に区分した新しい賃金体系を導入しました。 これにより、今後は同様の請求を受けても「適法に支払い済みである」と堂々と主張できる体制が整いました。
お客様の声
A運送 代表取締役 社長様より
通知が届いた時は頭が真っ白になり、夜も眠れませんでした。「300万なんて払えない、会社を畳むしかないか」とまで思いました。 先生は法律論だけでなく、「ドライバーの気持ち」や「運送業界の慣習」まで理解してくれた上で、現実的な落とし所を探ってくれました。 おかげで会社を守ることができました。高い勉強代でしたが、これからは安心して経営できます。本当にありがとうございました。
社労士の所感・解説
運送業の「歩合給=残業代込み」は通用しません
今回のケースは、運送業界で非常に多い「歩合給に残業代を含んでいるつもり」という認識のズレが原因でした。 近年、最高裁の判決(国際自動車事件など)により、残業代の計算方法は非常に厳格化されています。「契約書に書いてあるから大丈夫」と思っていても、その計算式が法的に無効とされるケースが後を絶ちません。
今すぐご確認いただきたいこと
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雇用契約書に、基本給と固定残業代の金額が明確に分けられていますか?
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「手待ち時間」の取り扱いは明確ですか?
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実際の残業時間が、固定残業代の設定時間を超えていませんか?
未払い残業代請求は、ある日突然やってきます。リスクを感じた経営者様は、トラブルが起きる前に一度ご相談ください。貴社の実情に合わせた規定の整備をお手伝いします。