栃木県鹿沼市・日光市で創業58年の社労士法人

栃木県で事業を営む経営者の皆様、人事担当者の皆様。
毎年改定される最低賃金への対応に、頭を悩ませてはいませんか？
「人件費の増加は避けられないが、利益を圧迫するのは厳しい…」「賃上げをしたい気持ちはあるが、原資の確保が難しい」といった切実な声が、私たちの元にも多く寄せられています。

しかし、最低賃金引き上げは、単なるコスト増のピンチではありません。国の助成金を活用することで、生産性を向上させ、従業員の満足度も高める機会にすることができるのです。

この記事では、特に中小企業の皆様に活用していただきたい「業務改善助成金」を中心に、最低賃金引き上げに対応するための助成金制度について、社会保険労務士が基本から分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、自社で活用できる助成金のイメージが明確になり、次の一歩を踏み出すための具体的なヒントが得られるはずです。

最低賃金と助成金の基本知識

最低賃金とは何か

最低賃金制度とは、国が法律に基づき、企業が従業員に支払わなければならない賃金の最低額を定める制度です。これには、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業を対象とする「特定（産業別）最低賃金」の2種類があります。栃木県で働くすべての労働者（パート・アルバイト等含む）には、栃木県の地域別最低賃金額以上の賃金*を支払う義務があります。
*今年度の栃木県地域別最低賃金額は、1068円です。

助成金の種類と目的

助成金とは、主に厚生労働省が管轄する、国の政策目標（雇用の安定、労働環境の改善、能力開発など）に沿った取り組みを行う企業を支援するためのお金です。金融機関からの「融資」とは異なり、原則として返済が不要なのが最大のメリットです。
助成金を活用することで、企業の金銭的な負担を軽減し、より良い会社づくりへの投資を後押しすることを目的としています。

最低賃金引上げに伴う助成金制度

業務改善助成金の概要

最低賃金の引き上げに直接対応するために設けられた、まさに中小企業の皆様のための制度が「業務改善助成金」です。この助成金は
①生産性を向上させるための設備投資などを行い
②事業場内で最も低い賃金（事業場内最低賃金）を一定額以上引き上げる
この2点をセットで行う場合に、その設備投資にかかった費用の一部が助成される、という仕組みです。

例えば、「新しいPOSレジを導入して会計業務を効率化する」「厨房に最新の食洗機を入れて作業時間を短縮する」といった投資と、従業員の賃上げを同時に実現できます。

キャリアアップ助成金の活用

「キャリアアップ助成金」は、パートタイマーや契約社員といった非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための制度です。複数のコースがありますが、例えば「正社員化コース」は、有期雇用の従業員を正社員に転換した場合に助成が受けられます。

最低賃金の引き上げを機に、単に時給を上げるだけでなく、優秀な人材を正社員として定着させたいと考える場合に非常に有効です。従業員のモチベーション向上や人材確保にも繋がり、企業の持続的な成長を支える一手となります。

助成金の申請手続き

申請の流れと必要書類

助成金の申請は、正しい手順を踏むことが非常に重要です。特に覚えておいていただきたいのは、「計画→実施→申請」という順番です。設備投資などをすでに行ってしまった後では、原則として申請できません。

【主な申請の流れ（業務改善助成金の場合）】

助成金交付申請書の提出：どのような生産性向上に取り組み、賃金をいくら引き上げるのか、という計画書を労働局へ提出します。

交付決定通知：提出した計画が審査され、問題がなければ交付決定通知が届きます。

計画の実施：通知を受けてから、計画に沿って設備投資や賃金の引き上げを実施します。

事業実績報告書の提出：計画通りに事業を実施したことを証明する書類（領収書、賃金台帳など）を添えて報告します。

助成金の支給：報告内容が審査され、助成金額が確定し、指定の口座に振り込まれます。

必要書類は多岐にわたりますが、主に労働者名簿、賃金台帳、見積書、就業規則などが求められます。

申請時の注意点

助成金申請で最も多い失敗は、手順を間違えることです。前述の通り、必ず国の承認（交付決定）を得てから事業を開始することを徹底してください。また、申請期限は厳格に定められていますので、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。書類の不備で何度も差し戻しになるケースも少なくないため、専門家である社会保険労務士にご相談いただくのが、確実かつスムーズな受給への近道です。

助成金を受けるための条件

対象事業者の要件

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が対象です。具体的には、資本金の額や常時使用する労働者数が、業種ごとに定められた基準以下である必要があります。また、雇用保険の適用事業所であることも必須条件です。

助成金の支給要件

助成金ごとに細かな要件がありますが、業務改善助成金の主な要件は以下の通りです。

・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること。

・事業場内最低賃金を一定額以上（例：30円以上）引き上げること。

これらの要件を満たす計画を立て、実行することが求められます。

地域別最低賃金と助成金の関係

地域別最低賃金の設定方法

地域別最低賃金は、毎年10月頃に改定されるのが通例です。中央最低賃金審議会が示す目安を参考に、各都道府県の審議会で地域の経済実態に合わせて議論され、最終的に決定されます。

地域別助成金の適用例

例えば、2025年10月に栃木県の最低賃金が1,068円に改定されたため、宇都宮市で飲食店を経営するA社のパートタイマーの時給が現在1050円だった場合、最低でも1,068円まで引き上げる必要があります。

この時、A社が業務改善助成金を活用し、「事業場内最低賃金を30円引き上げて1,080円にする」という計画を立て、最新の券売機（50万円）を導入するとします。この場合、設備投資費用50万円の一部（例えば、助成率4/5で40万円）が助成される、といった活用が可能になります。

助成金の活用事例

成功事例の紹介

企業: 栃木県鹿沼市の製造業B社

課題: 長年使い続けた手作業の梱包ラインが非効率で、残業が発生しがち。最低賃金引き上げで人件費も増加し、経営を圧迫していた。

活用した助成金: 業務改善助成金

取り組み: 助成金を活用して、簡易的な梱包機（80万円）を導入。同時に、全従業員の時給を40円引き上げる賃金規定改定を実施。

結果: 梱包作業の時間が半分に短縮され、残業がほぼゼロになった。生産性が上がったことで新たな受注にも対応できるようになり、売上が15%向上。賃上げにより従業員の定着率もアップし、採用コストの削減にも繋がった。B社の社長は「単なるコスト増だと思っていた最低賃金引き上げが、会社を強くするきっかけになった」と語っています。

業種別の活用方法

小売業: POSレジや自動釣銭機を導入し、レジ締め作業を効率化。

介護事業: 介護リフトや記録管理システムを導入し、職員の身体的負担と事務作業を軽減。

建設業: 小型建機や最新の測量機器を導入し、現場作業の安全と効率を向上。

助成金申請後の注意事項

交付決定後の手続き

計画通りに事業を実施したら、期限内に事業実績報告書を提出します。この報告書に基づき、助成金の額が最終的に確定されます。

事業実施報告の重要性

提出した計画と実績に相違がある場合、助成金が減額されたり、不支給になったりする可能性があります。領収書や写真など、計画通りに実施したことを客観的に証明できる証拠は、必ず保管しておきましょう。また、労働局による実地調査が行われる場合もありますので、誠実な対応が必要です。

助成金に関するよくある質問

助成金の申請に関するQ&A

Q1. 申請手続きは難しいですか？

A1. ご自身での申請も可能ですが、計画書の作成や必要書類の準備には専門的な知識が求められる部分もあります。本業がお忙しい経営者様にとっては、大きな負担になることも事実です。

Q2. 社労士に依頼するメリットは何ですか？

A2. 書類作成の手間が省けるだけでなく、豊富な知識と経験から、貴社に最適な助成金の提案や、採択されやすい計画書の作成支援が可能です。結果的に、受給の確実性が高まります。

助成金の受給に関するQ&A

Q1. 助成金はいつもらえますか？

A1. 事業実績報告書を提出し、審査を経てから支給されるため、申請から受給までには数ヶ月から1年近くかかる場合もあります。設備投資などの資金は、一度立て替える必要がある点にご注意ください。

Q2. 他の助成金と併用できますか？

A2. 助成金の種類によっては併用が可能です。ただし、同一の取り組みに対して複数の助成金を受給することはできません。詳しくは専門家にご相談ください。

今後の最低賃金と助成金の展望

政策の動向と影響

今年度の最低賃金全国加重平均は1,121円になりました。昨年度と比べて66円もの上昇です。今後も最低賃金は上昇傾向が続くと考えられます。賃上げは、今後も企業にとって避けては通れない重要な経営課題となり続けるでしょう。

中小企業への支援策の進化

この流れを受け、国の中小企業への支援策は、特に賃上げと企業競争力維持を両立させる視点から、生産性向上要件の強化や設備投資とのセット支援などが拡充される動きが予想されます。常に最新の情報をキャッチし、自社で使える制度を見逃さないことが重要です。

公式サイトと資料リンク

• 栃木県「とちぎ賃上げ加速・定着支援金」公式ページ 栃木県公式ウェブサイト

• 厚生労働省「キャリアアップ助成金」制度案内 厚生労働省

• 厚生労働省最低賃金引上げ支援制度案内 

• 栃木県「とちぎ賃上げ・業務改善奨励金」案内 栃木県公式ウェブサイト

• 各自治体の商工会・労働局サイト（申請案内、書式ダウンロード等）

専門家への相談窓口

栃木県最低賃金総合相談支援センター（栃木県・社会保険労務士会） 
栃木労働局 労働条件や助成金相談窓口 都道府県労働局所在地一覧

ご自身での情報収集や申請に不安を感じる場合は、お近くの社会保険労務士など、専門家への相談をお勧めします。

まとめと今後のアクション

助成金活用の重要性

今回の記事では、栃木県の最低賃金引き上げに対応するための助成金、特に「業務改善助成金」について解説しました。最低賃金の引き上げは、決してマイナスなことばかりではありません。助成金という国の支援を追い風に、生産性向上や従業員の待遇改善といった前向きな投資を行うことで、企業はより強く、魅力的な組織へと成長することができます。

次のステップに向けて

まずは、自社の現状の賃金体系を確認し、「どのくらい賃上げが必要か」「そのために、どのような業務効率化が可能か」を検討することから始めてみませんか？

「自社の場合、どの助成金が使えるのか具体的に知りたい」 「申請手続きをサポートしてほしい」

そうお考えの経営者様、人事担当者様は、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご活用ください。貴社の状況を丁寧にお伺いし、最適な助成金の活用プランをご提案させていただきます。未来への一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。

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