最低賃金の計算に「繁忙手当」「食事手当」は含めていい?判断基準と給与設計の落とし穴
最低賃金の算定ルール:手当の「名称」ではなく「実態」で判断する
最低賃金を確認する際、基本給だけでなく各種手当を対象に含めてよいか迷うケースは少なくありません。
結論から言うと、最低賃金の対象となる賃金は「毎月支払われる基本的な賃金」(最低賃金法第4条第3項・同施行規則第1条)であり、手当の名称ではなく支給目的・支給条件・支給実態によって判断します。
このうち、次の賃金は最低賃金の算定対象から除外されます。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金
- 精皆勤手当
- 通勤手当
- 家族手当
現物給与が最低賃金の算定対象となる場合には、その価値を適正に評価する必要があります(詳しくは食事手当の項目で解説します)。
これを踏まえ、ご相談の多い「繁忙手当」と「食事手当」の取り扱いを見ていきましょう。
1. 繁忙手当の取り扱い
繁忙手当は、臨時的な支給か/通常の労働の対価かによって判断が分かれます。
【算定から除外されるケース】
突発的な繁忙などに応じてその都度支払われるもので、その支給が「臨時に支払われる賃金」に該当する場合には、最低賃金の算定対象から除外されます。
【算定に含まれるケース】
あらかじめ明確な支給基準が定められており、一定の条件を満たした場合に通常の労働の対価として支給される場合は、単に毎月支給されないことだけを理由に除外されるとは限りません。
個別の就業規則や支給実態に応じた慎重な判断が必要です。
2. 食事手当の取り扱い
食事手当は、支給形態(現金支給・実費弁償・現物給付)によって取り扱いが大きく異なります。
【現金支給(定額)の場合:原則として算定に含まれる】
「出勤1日につき500円」など、実際の食事代を問わず勤務日数に応じて定額で現金支給される食事手当は、労働の対価としての賃金であり、最低賃金の算定対象から除外される手当(精皆勤手当・通勤手当・家族手当など)にも該当しないため、原則として最低賃金の算定対象に含まれます。
【実費弁償の場合:算定対象外】
従業員が立て替えた食事代(例:480円のお弁当代の領収書)を会社が後日精算するなど、実費相当額を補填するものは、労働の対価としての賃金には該当しないため、最低賃金の算定対象とはなりません。
【現物給付の場合:内容に応じた判断が必要】
社員食堂での食事や弁当などを現物で提供する場合には、現金で支給する食事手当とは取り扱いが異なります。
労働の対価として食事などを現物で支給する場合、労働基準法では賃金の通貨払いが原則とされており、現物で賃金を支払うためには、法令または労働協約に別段の定めがあることが必要です。
また、最低賃金法第5条では、賃金が通貨以外のもので支払われる場合や、会社が従業員に提供した食事などの代金を賃金から控除する場合には、その現物給与等を適正に評価することとされています。
したがって、食事を現物で提供している場合には、一律に最低賃金の算定対象になる、または対象外になると判断するのではなく、その食事が労働の対価としての「賃金」に該当するか、現物給与として適法に支給されているか、その評価額はいくらになるかなどを確認したうえで判断する必要があります。
社労士のアドバイス:変動する手当に頼らない給与設計を
実務において重要なのは、「算定対象に含められるか」だけでなく、「その手当を前提とした給与設計にしてよいか」という視点です。
繁忙手当や日額支給の食事手当のように、月によって支給の有無や金額が変動する手当を前提に最低賃金をギリギリで設定していると、「出勤日数が少なかった月」や「閑散期」に意図せず最低賃金を下回ってしまうリスクが生じます。
リスクを防ぐためには、基本給等、最低賃金の算定対象となる固定的な賃金で最低賃金をクリアできる構成にしておくことが最も安全です。毎年秋の最低賃金改定のタイミングでは、手当の集計だけでなく、給与体系全体のバランスと支給条件の見直しを行うことをおすすめします。
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監修者
増渕 裕美
特定社会保険労務士/社会保険労務士法人アシスト 代表社員
給与計算・人事労務DXに強い社労士として、宇都宮市、栃木市、日光市、鹿沼市を中心に200社超の企業様をご支援しております。手続き代行だけでなく、給与計算、人事労務DX、助成金活用、労務相談までワンストップで対応。製造業・建設業・医療・ITをはじめ、累計30業種以上の企業様の人事労務体制づくりをサポートしています。
※本記事は2026年4月時点の法令・制度および今回の相談事例に基づいて作成しています。
※最低賃金の算定対象となる賃金は、手当の名称だけでなく、支給の目的や条件等によって判断されます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案について法的な結論を保証するものではありません。
※実際の給与計算や最低賃金への対応については、最新の法令・行政機関の公表情報をご確認ください。
※今回の解決事例は、個別企業の相談内容を一般化・匿名化して掲載しています。
